漫画感想/ルックバック(藤本タツキ)





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『チェンソーマン』の藤本タツキが描く青春物語『ルックバック』が単行本化されました。完全に表題作のみ収録で、あとがきのようなものはありません。作品ですべてを語る、ってことなんでしょうね。

前半の青春の感情が累積していく感じ、後半のカタルシスを破壊する展開、どちらが心を揺さぶるのかは人によって大きく意見が異なると思います。自分は前半が好きです。ガールミーツガール、大事なものを通して大事な人を見つけ出会い、変わっていく。いつまでも一緒ではないかも知れないけど、それでも濃厚な時を一緒に過ごす相棒のような存在と過ごす日常は素晴らしく、何度も心を揺さぶられました。細かいネームや、作中作の描写までも緻密で、ひとつひとつがこの作品を形作る大事な大事なパーツであり、すべてであると感じる世界。すごくキラキラして見えました。藤野が感情を爆発させた“あの見開き”を見たときの高揚感はすさまじく、この物語は果てしないエネルギーを擁していると感じました。

だからこそ後半を直視するのがつらい。不条理が憎い。あの事件を、本当にカラテキックでぶっ飛ばしたい。ぶっ飛ばしてなかったことにしたい。そういう気持ちが溢れて止まりません。モデルになった事件が発生した当時は、悲しいとかよりびっくりした感じだったけど、2人を知ってしまった今はもうただただつらい。

しかし蹴り飛ばしてしまいたい現実に向かい続ける、それでも描き続ける人を、それでも藤本先生は描きました。ぼくたちがどう受け取るかは、また人それぞれでいいのだと思います。ただ思い出して、折に触れて振り返ったりすることもあれば。

 

チラシ裏のコーナー
最初に公開されてから、2回ネームが変更されました。そのこと自体はあまり大事ではないと思っていて、それほど多くの人の目に触れ、心を動かし、語りたくなる作品だったんだな、ということだけ覚えておきたいなという気持ちでいっぱいです。

 

 





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