漫画感想/カラオケ行こ!(和山やま)





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森丘中合唱部部長の岡聡実は知らない男に突然「カラオケ行こ!」と誘われる。歌を上手くなりたいヤクザ成田狂児と岡の不思議な夏が始まる。

和山先生を有名にした『女の園の星』にも通ずる会話劇の上手さが目立ちます。岡と成田はもちろん、周りの人物の描写がとても秀逸です。岡のことを気遣っている合唱部の面々や、暖かい家族の描写は少ないものの、彼らのキャラクターが伝わってきます。人に教える中で自分の問題を乗り越えてゆく、みたいな展開は珍しくはないですが、人の描き方が素晴らしく、この人たちを見ていたいと思わせてくれます。モノローグは、口数少ない岡を語らせるためであり、エピソードを続けるための表現方法でした。成田の話は友人にすることはないけど、創作かどうかわからない思い出として3年経ったタイミングでああいう公開の仕方をとったのもわかります。成田に魅力を感じ一緒に過ごした日々を、誰かに伝えたかったのかもしれません。

描き下ろしはキャラクターを振り下げるエピソードでした。こうやって彼が誕生したのか、どこか狂った人生を歩み続ける彼の来歴が分かります。最後の友達ノートでは、岡の性格に理解が深まった感じがして好きです。あとがきも含めて、この2人のことを大事に考えて作った作品なのだと、改めて思いました。話が前後しますが、本編ラスト空港で岡がお母さんが選んだような服着て、お母さんが持たせたであろうおにぎり食べてるシーンがめっちゃ好きです。大事に作られたキャラたちが、低温ながらも魅力的に生きている。2人の奇妙な友情を描いた、恐ろしく秀逸な短編です。

 

 





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