岡田麿里監督作品『アリスとテレスのまぼろし工場』です。いつもの雑感書き散らし。ネタバレ気にしてないので、観覧予定の方は回れ右でお願いします。
●序盤はだいぶ静かに推移するので、大丈夫かこれ？みたいな気持ちにちょっとなる。ネタバラシが始まると理解できるのでいいんだけど、最初が置いてきぼり感かんじるんだよな。みんなうっすら心が死んでるというのが伝わってきちゃうし、感情の起伏が少ないので、こっから盛り上がるの？みたいな。
●そのべぇ。「助手席載せてもらったし」というのは、あの時口から出ちゃったことで、その前に睦実にちょっかいだしてる時点で、ちゃんと好きになってるってことなんだよな。まぁ、田舎において自動車運転できるってのはたしかに大人の象徴だし、カッコいいと思ったのだろうけど。睦実欠席時の届け物も上履きみたいに意地悪されるかと思えば、ちゃんと届けようとしていたし本質的に悪い子ではないんだろうけど、状況から悪い部分が目立っちゃいましたね。
●佐上睦実。本作のメインヒロイン。やべぇ女。序盤のパンツ見せからヤバイ雰囲気出してたけど、五実の世話をするのに性欲ある男子だと困るので選別してたとか理由は一応つくんだよな一応。ずっと拗ねてるような不機嫌な表情をしていて、そこが惹きつけられる。正宗が好きになっちゃったのもわかる。声優さんの演技がとても魅力的で、あの声にやられたって感じもした。閃光のハサウェイのギギ・アンダルシアの声優さんなんだね。このタイプの声音と演技が好きすぎる。上田麗奈さん覚えたぞ。
「むつみはむっつの罪」みたいなセリフで西尾維新思い出したけど、湿度が同じヤンデレ系ヒロイン戦場ヶ原さんとは明らかに違う。今思うとガハラさんはカラッとしてるな。いや、俺の基準値が狂ってきてるのか？
●”女子側の業”みたいなのも、男性目線になりがちな恋愛ものに一線を画す内容であることは伝わってきたけど、それ以上に女性が見ると思うところがあるのかなという、反射的な理解をした。要するにおっさんはピンと来ていない。少年による父越え（父殺し）の女性版という枠にはめて理解するのは安易すぎるんだろうな。息子と父の関係と、娘と母のそれはまた違うような気もするし。最後、別れの時に睦実の勝利宣言のようなことが女性的だということなんだろうか。実は、本作で一番笑ったところがここなんだよな。そういう意味では、俺も本能的に理解ってしまったのか。あの場面で言うかこれ！？って思って、急にバキみたいな驚かせ方されちゃったので、笑った。
原ちゃんの最後の判断も自分の感情を信じたものだったけど、だいぶ”女”だったよなぁ。というか”少女”か。正宗の母は逆にそちら側を選択しなかったのが意外。母親には母親でいてほしいという願いみたいなものが見えた気がした。
この箇条書きしてて気が付いたけど、本作で言及したくなるのはやっぱり女性キャラで、男性キャラはちょびっと舞台装置ぽく感じる。でもそれは、男性目線ラブコメにおける女性キャラのそれであって、お互い様であり、本作の主人公はやっぱり女性たちなんだと感じた。
●キスシーンめっちゃエロい。土砂降りが降るのは、五実の涙のイメージなんだろうけど、体液の交換みたいに見えるほどつゆだくだった。正宗の「やめたくない」に、「やっぱオスじゃん」っていつもみたいに悪態ついてほしかったよね。それくらいいつもの睦実じゃなかったわけだけど。
●五実が花嫁みたいな服装になって、睦美にベール返すところとかなんかモチーフあるのかな。ジャージのままやるシーンじゃないからそりゃ理由付けて着替えさせるだろうけど、もうちょっと意味が欲しい。俺の知らない作品のパロディとかであってほしい。
●トンネル肝試しで行方不明者だしてるのに死ぬほど怒られたという感じじゃなかったり、工場再起動させるシーンもトラブルがあったけど乗り切ったみたいな感じじゃなくサラッと済まされていたりと、個人的に不思議に思ったところも多い。しかし、総じてよくわからない感情を奮い立たされる、他の映画では得難い感情になった稀有な作品でした。SF部分の齟齬について指摘してる感想見かけたし、自分も見ててわかんなくなったポイントもあるけど、そこは重要なところじゃないなぁって。ノベライズ版とかで自分の理解が追いついていないところフォローできたら嬉しいかな。
●秩父三部作あたりから垣間見える田舎観・大人観とか、失恋が人を成長させたり、大人にするという価値観がはっきりと押し出されている。そのあたり好きかどうか、岡田麿里の価値観を物語に落とし込んだものを好意的に見れるかどうかで、好みが分かれる作品なんでしょうか。自分は前回の初監督作品未見なんですが、秩父三部作大好きだったので、まぁ好きな味ですね。ここまで原液でお出しになるとは思ってもみませんでしたが、、。
