式の前日
表題作。式の前日というハレの日直前のはずが、そう明るいわけでもない雰囲気。二人の距離感と会話から思う感じ取れるものは、読者に委ねられた。10回読むと10回違う感想が出てくる。その日の自分の気分や、今考えていることが反映されるような作品。
あずさ2号で再会
893風の元旦那と娘の再会。特別なひとときを日常として表現できる人ってすごいなと思う。
モノクロ兄弟
壮年男性が居酒屋で昔のコイバナをする話。少女漫画の男キャラたちの30年後、みたいな。
夢見るかかし<前編・後編>
親戚に預けられた兄妹の話。長いだけあって、しっかり舞台説明されており、感情移入しやすい。兄はいつまでたっても兄、、、なのか?
10月の箱庭
世捨て人みたいな小説家の話。本作では唯一ミステリーっぽい感じで、好みが分かれそう。
それから
猫視点の話。視点変えるとこう見えるんだな、っていう可笑しみの作品。ほのぼのしてて猫雑誌に載ってそう。
あれとこれがつながってるとかいうとネタバレになるので書けないですが、この順番で生み出されたとか、ここの関係性が~とか、いろいろ。まったく別の短編ではあるものの、一人の作家が作り出したものなんだなと思える作品集。ある意味、すべての作品が兄弟。どれが兄姉でどれが弟妹かは各自の胸の中に。
全体的に白を作るのがうまい。多くを語らず、読者の想像にまかせたり、そこをうまく利用するような構成で、みな思い思いの感動を得られるつくになっている。ずるい。ずるいと思ってしまうくらい巧みで、それ以上に情緒的だから、またすごい。