冬の日の夕暮れ。
友達との本気のぶつかり合いによって前に進むことを決意した羽瀬川小鷹は、
逃げ出してしまった告白の返事をする。
それと時を同じくして、
三日月夜空から隣人部の部員たちに一通のメールが届くのだが……。
新たな局面を迎えた隣人部は、生徒会と共に
スキー研修で宿泊する旅館の下見(という名目の慰安旅行)に行くことになる。
小鷹の迷走によって結果的にもたらされた“外側のコミュニティ”との交流は、
どんな化学反応を引き起こすのか?
8巻から加速度的に展開が早くなってきています。
再び隣人部の面々がロマンシング佐賀をプレイするエピソードも含めて
無駄な展開はなく、緻密に練られた構成であることが容易にわかります。
今まですべての好意を無視してきた小鷹が
すべてを受け入れて、それでどうするかという
普通のラノベなら最初のスタートラインのような話です。
ヒロインたちも、今までとは違う
冗談の延長線上ではない好意を表現してきます。
逆に、ラノベによくあるハーレムものに近くなった感じがしますが
それは表面上のことで、
いままでのエピソードの積み重ねが、ただのハーレムものより
層の深い感情を伝えてくれています。
恋愛話もありますが、それより
その恋愛を含めてどう友達関係、人間関係を構築、維持するか
ということの苦労やおかしみが伝わってきます。
非常にメタな構造になっていますので、
ラノベが好きな人にはぜひ読んでほしい作品です。
ライトノベルは、その刊行方式から、
最初から完結まで10巻を超えるように話を作ることが難しいのですが
それは平坂先生とMF文庫の信頼でしょうか。
平坂先生とMF文庫の威信をかけた超名作。
その行く末をリアルタイムで読まないのはもったいないです。