2017年に出版された『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』が文春文庫になって再登場。アラフォーになりべ強を始めた事で、若いころに悩まされたものの正体を知る。自分を悩ませた”新自由主義”がないところに行きたい。その想いが若林をキューバに動かす。日本にない価値観、光景、人々。様々なものに出会い変わってゆく。キューバ旅行に加えて、描き下ろしでさらなる彼の道筋を辿る。
●モンゴル
仕事、家族、動物、音楽。日本と違うそれらに触れ、ひとつひとつ考えて、わかっていく若林。ところどころ「特にエピソードがなく忘れた」というあっさりとした描写で済まされている。逆に、詳細に描かれているところは、彼の心にしっかり残ったんだなとわかる。短いながらも文章の緩急が素晴らしく、読みやすい。モンゴルの食べ物、風景、乗馬、音楽と初めてのはずなのに、いろいろとしっくりくるモンゴルの文化に驚きを隠せない様子も愛らしい。
●アイスランド
3回目の海外一人旅。こちらはキューバ・モンゴルであったような海外文化との邂逅より、日本人パックツアーに一人で参加してしまった若林さんがいかにして乗り切るかというコメディチックな話。それこそオールナイトニッポンで話すようなエピソード。”若林への話しかけが解禁となって”という表現が好き。自ら作り出した”疎外感”を超えて、最終的にはディナーMCとして大まわしをする若林さん。
●あとがき コロナ禍の東京
キューバの社会主義、モンゴルの家族、アイスランドの自然を見て、日本を再認識する。人と経済と、自分と。
この本の締めに相応しい章。日本と比べるために他の国を見に行った若林が、何を得て、どう考えたかが綴られる。父の死や自らの生きづらさを経て、遠くに何かを求めた記録。
●解説 DJ松永
タイトルの「解説の場を借りた個人的な手紙」がすべてを表している。DJ松永の、極めて個人的な、しかし自分だけの心の内を話してくれたと勘違いさせてくれるような私信。ありったけの感謝の言葉が詰め込まれた6ページのリリック。
解説文をDJ松永に頼んだ理由や若林さんの最近の心境の変化など。「また仕事がない時期がこの先来る」と考えたときに~、という話がとても身につまされます。ラジオや春日さんからプレゼントをもらったことについても話されています。