初期衝動の熱き迸り『藤本タツキ短編集 17-21』が発売しました。4篇の短編を収録。あとがきでは、当時の気持ちや話題の読み切り『ルックバック』についても触れています。
■庭には二羽ニワトリがいた。
藤本タツキ最初期の作品。絵的には拙いものの展開・アイデアに今の片鱗が見えています。ファイアパンチ的世界観のはじまり。
■佐々木くんが銃弾止めた
クラスに拳銃を持った男が押し入ってくる。その男を佐々木くんは止める。『鈴木先生』の竹地に影響受けたというのはすごいわかる。ルックスも思想も、竹地くんの二次創作と言われても違和感ないかも。でもめちゃくちゃ魅力的だし、青い衝動を形にした良い読み切り。
■恋は盲目
島本和彦的な勢いがある。少しずつスケールアップしてくるのは漫才やコントのようなお笑いっぽさがある。そういう意味では少し転調が欲しかった気もするけど。勢いと天丼をテーマに描き切った感じがとても良い。
■シカク
かわいくておもしれーヒロインを登場させつつも、タツキ先生っぽさがある。熱があるときに描いたネームがもとになっているらしいけど、一周して普通の話になっているような気がする。もしくは単純に漫画が上手くなって、よくあるパターンに近い、読者が読みやすくなっているだけかもしれない。
ニワトリ以外の3作は、ジャンプ若手作家っぽい画風で、良くも悪くも量産型に見えたので、これが『ファイアパンチ』の絵になるにはどういう心変わりがあったんだろうか。“かわいい絵で暗い話”をやるというのが流行った時期もあるが、タツキ先生は“暗い絵でもっと暗い話”をやる、という道筋をひとつ作った作家になったのは大きい。『ファイアパンチ』『チェンソーマン』ファンも、タツキ先生の創作の過程を知るのに良い1冊ではないでしょうか。
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