声優のシビアな現実を描いた話題作
ここに完結!
2011年冬コミから約6年、同人誌から始まりアニメ化までした大人気声優コメディ『それが声優!』が5巻で完結しました。
5巻は、双葉が出会った人気若手声優”樹(いつき)ヒナタ”がメインに描かれます。大人気声優の彼女が遭遇する悲劇。しかしそれは声優ならだれしもが遭遇する可能性のある話です。不安定であり、代わりがいる仕事だからこそ、自分を選んでもらえるように精一杯やる。はたして声優は一生できる仕事なのか。声優という過酷な人気商売のシビアな現実が突き付けられます。結局最後まで双葉はバイトしながら声優活動をしていました。声優としてラジオやアフレコ、ナレーションの仕事があってもそれだけでは食っていけないという重い現実があります。声優という仕事の明るい部分ばかりクローズアップされることが多い中、現役で声優をしているあさのさんが本当に伝えたかったことが分かった気がします。やろうと思えば「それが声優!」はもっと明るいだけの声優コメディにもできたでしょう。イヤホンズは3人とも大ブレイクしてトップアイドル声優として活躍しつづけました!みたいな声優サクセスストーリーにもできました。声優あるあるを散りばめつつかわいいコメディにしてもそれなりに面白い作品にはなったと思います。しかし本作はそうなりませんでした。畑・あさの両先生はそうしませんでした。
普通、漫画家や漫画原作者はこんなラストにしません。もっと明るい、希望に満ちたラストにするのが普通のフィクションであり、読者に対する礼儀みたいなものでもあります。無意味に暗いラストは読者に対する裏切りですらあります。しかし逆に言えば、現役声優のあさのさんが原作する本作で手放しで明るく描いてしまうのは無責任なのかもしれません。シビアな現実を知っているものとして、いまそこで戦う当事者として、事実を曲げずに明確に伝えるために描かれた作品だったと思います。
それでも、明るく真剣に声優として活躍し続ける双葉たちの姿を、またどこかで読みたいと思うのは、声優好き漫画ファンの残酷な願いでしょうか。
ストーリー部分とはうって変わって、コラム&4コマコーナーは深く考えずに楽しく読めます。ストーリーとの温度差が激しすぎるのでびっくりしますが、こちらをメインに楽しんでる読者も多いのではないでしょうか。関智一実録ネタや、鷲崎さんとの絡みでよく聞くインフルエンザネタ、そしてあさのさんの趣味と実益を兼ねたお金の話などなど、声優にまつわる話は声優ファンなら十二分に楽しめると思います。できればこの4コマ&コラムだけでも、どこかで続けてほしいところ。あと正直なところアニメ放映時はイヤホンズの3人がこんなに売れるとは思わなかった、、、。毎日のようにアニメやラジオとかで声聴くもんなぁ。
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