19歳の鬼才が現世を塗り堕とす地獄の色
SNSで話題になった鬼才浄土るるが紡ぐ地獄、短編集『地獄色』が発売されました。
◆猫殴り
月刊!スピリッツに掲載された全3話の短編。いまのところ、浄土るる先生の100ページ超の作品はこれだけ(他は短編)です。謎の世界観から始まり、それが明かされつつ、小太郎が知っていることが増え、変わり、信じられなくなり、、、。シンプルな絵柄が読者に与える余白はすさまじく、それでいて方向性はしっかり定まっている。感情の導かれ方が気持ちいいのに、それは気持ち悪い。
◆鬼
第84回新人コミック大賞青年部門佳作受賞作。当時17歳の浄土るるが投稿し、話題になった作品です。今読み返しても圧巻の一言。これを17歳で生み出すメンタリティが恐ろしい。1ページ目の1、2コマ目から、3コマ目のドライブ感。これでほとんどの読者が心をわしづかみにされたでしょう。この作品で初めて浄土るる先生を体験した人も多く、あのラストは目にも、耳にも残ります。
◆神の沈黙
昨年、ビッグコミックスピリッツに掲載された読み切り。カルト宗教にハマっている親を持つクラスメイトに対してどうふるまうか。助けたいという気持ちを抱えて生きる主人公。主人公とクラスメイト数名、クラスメイト親、先生と人間関係が多く、他の作品よりわかりやすく漫画の構造に沿って作られています。読者への導線がひかれているからこそ、ラストシーンが与えるものは強くなるし、とても好きな作品。
◆こども
描き下ろし読み切り。浄土るる作品ではおなじみの家庭状況をストレートに描く。扉絵からおまけ4コマまで恐怖の完成度が凄まじい。これを真っ直ぐ、この絵柄でやり通すことができるのは本当に恐ろしい。
自分の常識、モラル、道徳観を再確認させられる1冊。変わらぬ日常とバッドエンドで塗り固められた地獄。あなたの倫理観はまだ正常と言えますか?