ガール ミーツ ゲーム
少女たちが格ゲーをやる理由
少女たちが織りなす熱いゲーセンストーリー『いつかみのれば』の完結2巻が発売されました。
1巻は鉄拳っぽいゲームをメインにゲームとの出会いが描かれました。2巻ではガンダムVSシリーズっぽい”超動物ジャングルVS.マキシビースト”も登場します。両ゲームとも描写が細かく、システムや駆け引きの解説はかなり細かくガチです。ここが元ネタのゲーム好きな人にはすごい楽しいポイントですね。また元ネタのゲームをアレンジして使用しているのもユーモアがあって面白いです。JNタケノコライフル、JNツノダガー、「俺が、、ジャングルだ!」どう見てもエクシア(刹那)がもとになってるイノシシや、頭部がタコで刀を持っている鉄拳の吉光のような猫卍など、元ネタとすり合わせるだけでも楽しいです。
相手を降ろすことを目的とした戦い、「当てるタイミングで」技を出せば勝てるゲーム、「相方ゲーでした」、「了解!トラン××」、など、対戦ゲーマーならニヤリとするようなワードが散りばめられています。元ネタの鉄拳とガンダムVSシリーズのプレイヤーなら、ついつい「あるある!」と頷きながら読んでしまいます。対戦の駆け引きや対戦中の精神状態についても、かなり詳しくリアルな展開が繰り広げられます。西先生以外に監修がついているわけでもなさそう?ですし、これはかなり鉄拳とガンダムVSシリーズをプレイして、大好きなんだなと伝わってきます。ゲームセンターや対戦文化を経験した人でなければこういう展開思いつかないし、もし人から聞いた話なら、対戦プレイヤー心理をこのようにリアルに描写できないでしょう。
主人公ミノが対戦ゲームという新しいものに出会い、ハマっていく姿はまさにガールミーツゲーム。しかし、対戦で勝つためには地道な練習や知識の会得、時には苦痛にも近い時間が必要です。勉強やスポーツのように将来に繋がるわけでもありません。ふと「なんでこんなことやってるんだろう」と思うこと、ゲーマーなら誰しも経験があると思います。そんなモチベーションの低下や伸び悩みも対戦ゲーマーの誰もが通る道です。ふわふわしたかわいい絵柄でゲーマーの葛藤というリアルが描かれているのは、そのマッチングが絶妙です。ちなみにプレイヤーも対戦中の表情も割とシリアスで、楽しく会話している顔との落差がおもしろかったりもします。
「生きた人間をめちゃくちゃにしたい」「プロゲーマーになりたい」そんなモチベーションで高みを目指す少女たちに触れ、改めて自分が今後どうしたいのかミノは気付きます。そして周りも少しづつ変わっていきます。少し打ち切りっぽい駆け足な幕引きでしたが、ひと夏の成長物語として素敵なエンディングでした。おそらく掲載誌(百合姫)のニーズに合わなかったことで短い掲載期間となったのが残念です。しかし、作者の西あすか先生の「格闘ゲーム、ゲーセンが好き!」という気持ちが溢れんばかりに伝わってくる情熱的な作品でした。ぜひまた格闘ゲームを題材にした作品を描いて欲しいですね。
いつかEVO編が読みたいという願いがみのれば、うれしいです。