漫画感想/君だけが光(シギサワカヤ)

 

シギサワ女子の生きる軌跡

 

シギサワカヤが描く新しいガールズラブの世界。楽園web増刊に掲載分をまとめた単行本『君だけが光』が発売されました。主な収録作は「スプリングハズカム」と「プレパラート」です。

 

●スプリングハズカム

1ページ目から威力たっぷりのモノローグで始まります。美砂(黒髪の方)視点がメインで、恋愛にのめり込んでいく過程が描かれます。一部、純香(金髪人妻)視点を描いた箇所もあり、さらりと切り替わる視点に、どちらがどちらの気持ちなのか、お互いの感情が解けていくような感覚がします。最初は”魔性の女にハマっていく主人公”という構図から他のシギサワ作品と似た印象を受けましたが、ちょっと読むともう全然違う。「ダメな社会人ガールズラブ」と題されており、この2人がどう生きていくのか、ロマンチックな決断と現実の合間のような、不思議なフィクションを読んでいる感じがします。ラストの「スプリングハズカム アゲイン」では、彼女たちの選択のこれからが、良い読後感を残してくれます。

 

●プレパラート

[前編]は在りし日の青春、[後編]は2人のそれからが描かれています。学生時代の話かと思いきや、結構その後までカバーされているのに驚きました。女の友情と人生、みたいなものが全体を通して表現されています。学生時代の濃密な日々って、社会人になっても思い出すので、今後もまた思い出すんだろうなぁと自分のことも重ねちゃったりして。ガールズラブって感じはあまりしませんが、青春の日々を思い出す作品でそういう意味では男性女性問わず普遍的な共感を得られる気がします。

 

2作とも、ところどころにシギサワカヤ節は見えるものの、いつもの食欲!暴力!恋愛欲!みたいな感じは薄め。女性同士の恋愛(もしくは青春・友情)で、いつもの男女間のやりとりとは違う空気感があります。それでもシギサワ先生の会話劇の面白みは失われていません。女性同士の嫌み、牽制など、胃が痛くなる度は上がっている気もします。その感情と裏腹な言動がとても愛おしく、キャラを人間たらしめているところでもあるわけですが。

シギサワ初心者に、いきなり『お前は俺を殺す気か』を勧めるのもアレなので、まずは本作から勧めるのもアリではないでしょうか。殺伐として胃が痛くなるような作品を求めている上級者は、楽園28号から始まる新連載『初恋ディストピア』に期待しましょう。

 

 

 

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