映画感想/侍タイムスリッパー





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実写映画『侍タイムスリッパー』を見てきました。各所で話題!小規模上映から内容が認められ上映拡大していく様は『カメラを止めるな!』を彷彿とさせますね。桜木町ブルク13、平日午前中の小さなシアターですが、結構席が埋まっていて人気を感じました。客層は、時代劇世代のお年寄りが多い感じでしたね。

 

以下、雑感です。ネタバレ厳禁、絶対に情報なしで初見を迎えてほしい作品なので、未見の方は戻ってください。あなたの初見はあなたにとって最高の体験なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■幕末武士がタイムスリップしてきたらどうなるかっていうリアリティ。時代劇撮影所だからあの格好でも不思議がられないし、高坂が前後不覚のまま、記憶喪失として処理されて進行したのびっくりしたな。そういえば、最後まで高坂は自分の正体明かさなかったな。終わっていま振り返って気付くくらいなので、中盤以降は完全に映画にのめり込んでてそれどころじゃなかった。自分は実写映画のリアリティライン気にしちゃうタイプなんだけど、最々序盤がちょっと馴染めなかった(いつも実写映画序盤に共感性羞恥みたいなのになる)以外は、全然気にならなくてすごい脚本だと思った。

 

■観客から一番笑い声が出てたのは、関本との最初の稽古で、つい関本を切りまくってしまう高坂のシーン。あそこ繰り返しが露骨なのに、かつ関本先生の斬られ方がうまくて、みんなすっごい笑ってた。

次点で、入門結果を待つ寺の食卓のシーン。前フリが丁寧かつすぐに全部回収しててわかりやすかった。

 

 

高坂新左衛門のキャラクター・演技が素晴らしい。君主の命に忠実な侍であり、朴訥な田舎の壮年の側面もあり、非常に魅力的だ。今風に言えば「真面目」という表現になってしまうがそれだとうまく表現しきれてないか。会津訛りの武士語が雰囲気あって、時代劇撮影所の中でも埋もれずに侍かつ主人公として屹立している。「今がその時ではない」のオトし方も良かった。

 

風見恭一郎、めちゃくちゃ渋くてカッコいい。そこまでに2枚目として活躍してた錦京太郎みたいな感じかと思えば、さらにシブくて目力凄くて完全に2人目の主人公だった。時代劇の大御所の迫力も感じさせつつ、本気でカッコいいと思える俳優さんで時代劇パートはしびれた。そして背負う物語も重い。彼の回想シーンがめっちゃ好き。彼も高坂と同じように現代にたどり着き、同じように軒下にうずくまり、そしてちょっと違う道を経てなんとか身を立ててきたんだろうな。訳も分からず弁当貰い、注意されまくりながら殺陣をする描写は、非常に生々しく感じた。見た目より年齢はちょっと若くて、顔に刻まれた皴の分苦労してるような気がする。

 

■高坂が斬られ役として出世して大作に呼ばれる流れは、さすがに安易なチートものっぽいなと思ったら、納得せざるを得ない理由が隠されていた。会議室での邂逅は緊張感あったし、ここからもう一回物語が始まるんだ!というのが解って身震いした。そこに気付かされた時、「あっ!」と小さく声出しちゃったもんな。

 

■高坂、風見、そして第3の狂気は作中の監督。いい感じに狂ってるけど嫌な人じゃなくて、良い感じに優子に転がされたりもしてて良かった。後から出てきた大人なので、対立する嫌な役割かと思えば、こいつもある意味侍側だったな。パッションとセンス系の監督。優子みたいな助監督と相性良いだろうな。

 

■ハリウッドから声がかかるほどの監督も、軽薄なプロデューサーっぽい人も、斬られ役仲間も、みんないい人ばかりで、悪い人が居ないのも安心して見れる要素。撮影の邪魔した錦京太郎とも、険悪になる描写もなかった。役者として出世しているので、他の斬られ役から嫌がらせされたり陰口のひとつも叩かれそうなものだが、そういう感じにならなかったのは、高坂のキャラクターによるところも大きいのだろう。彼の謙虚で真摯な姿勢は嫌われることなく、ほかの仲間にも、観客にもそれが伝わっていたと思う。

 

■時代劇と歴史、役者と武士という要素がすごい相乗効果を生み出していて、2人の生き様や目的、とかいろんなことがぐるぐる頭を駆け巡る。自分は時代劇に詳しくないけど、知ってる人はニヤリとするような要素もあったのだろうか。

 

■全然別の話なんですがアニメ『機動戦艦ナデシコ』のイネス=フレサンジュっていうキャラが大好きなんだけど、それと似た要素があってびっくりした。上映中「イネスさんじゃん!」って声出そうになった。しかもタイムスリップでの再会&時間差による年齢差に加えて、本作では”宿敵”という要素が乗っかった3倍満!!個人的にはこの要素だけでごはん3杯食べれれてしまうくらい好きなんだよな~。風見の「俺の方が年上になってしまったな」のセリフが好きすぎる。

 

全編通して脚本と役者さんの名演が最高で、緊張感や泣かせどころもあって、幅広く薦められる名作です。これが上映館1館から始まったとは思えない。広まって本当によかった。もっと多くの人に見てほしい、そして監督の農業も上手くいってほしいと思います。

 

 

 

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