漫画感想/だがしかし 11巻(コトヤマ)





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特定ジャンルハイテンション女子ラブコメという一大ジャンルを作り上げた偉大なるショートコメディ、ここに完結

 

2度アニメ化され、人気を博した『だがしかし』の完結11巻が発売されました。第171かしから最終かし、そしておまけの4コマも収録されています。おまけ4コマのラブコメ補完っぷりが凄い。これだけで白米が3杯いける。

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最終巻でもいつものノリは健在

 

最終巻にして珠玉のエピソード集になっています。ラブコメとしての結末、ココノツの進路という物語の主展開を踏まえつつもちゃんと駄菓子を取り上げたショートギャグ作品として面白いです。さや師屈指の名セリフ「もうしばらく誰のものにもなんないでよね」は、ラブコメ史に残る名言でしょう。2番手ヒロインだからこそ言えるこの言葉。後年に語り継ぎたいセリフ&後ろ姿。このページ、フルカラーポスターにならんかな、額に入れて飾りたい。

『だがしかし』以降、特定のジャンルに情熱を燃やす女性に振り回されるハイテンションラブコメが増えました。手品とか爬虫類とか。オタク的に何かを偏愛する女性を見ているのは楽しいですし、主人公がその道に詳しかったりするのはラブコメ的に最低限の理屈が通ります。主人公はボケよりツッコミのほうが進行しやすいですし、非常に理にかなった構図です。とてもありがたい発明で、漫画業界全体の財産になりました。それだけ本作の影響は大きいです、これからもこの構図【特定ジャンルハイテンション女子振り回される主人公】の作品は生み出されるだろうし、僕たちはそれを読んで「これが駄菓子だったらほたるさんだなぁ」って思いだすことでしょう。

本作は非常に≪漫画的≫であり、漫画のお約束を大いに活用した演出はページ数の短い本作に合っていました。例に挙げると、11巻ではだい173かし「ヤングドーナツ チョコ味」がわかりやすいでしょう。1コマ目でこれはアニメについて言及してると多くの読者が理解でき、その不自然な言葉回しからすぐに「ああ、今回はアニメを宣伝するというギャグか」と理解できます。読者がわかりやすく、ここが面白い、ここが面白がるところだと明示してくれ、難しく考えず気軽に楽しめる、まさに駄菓子のような作品でした。魅力的なキャラクターたちの会話劇とそれに飽きさせないアクロバティックなカメラワークも魅力に資するところではあります。

個々のキャラが魅力的であることはもちろん大きいのですが、その配置バランスが絶妙ということも見逃せません。この点では、コトヤマ先生のキャラクターワークが巧いという見方もできますし、リアルな人間関係に置き換えた見方もできると思います。リアルな人間関係でもお互いのキャラを把握して一緒にいるうちに調整されていくことがあり、「(創作作品で)キャラ同士のバランスがいい」というのは「仲が良くて自然に連携とれてる」ように見えるところでもあります。本作のメインヒロインほたるさん、ココノツのことが好きな幼馴染サヤ、ラブコメ作品的には二人は恋のライバルではありますが、本作ではココノツをめぐってバトルするようなことはありません。2人は自らの立ち位置を理解したうえでお互いのポジションを尊重しあっている節があります。それが顕著なのは、おまけ4コマでほたるの「(次に会うまで)彼女作ったり何してもいいわよ」発言です。ほたるの発言は、ココノツがサヤに漏らすところまで計算に入っているでしょうし、それ込みで本心なんだろうなという、キャラクター性の強さと関係性が垣間見えます。その時のサヤの反応も最高にかわいいし、その前の「もうしばらく誰のものにもなんないでよね」発言からの流れなど込み込みで最高かよ。これで終わりとかどうすんだよ!今後何を食って生きていけばいいんだよ!男の子はラブコメ食わないと死んじゃうんだよ!

これだけ気持ちの良いラブコメ表現に長けたコトヤマ先生ですから、もうちょっとラブコメに振った作品を読んでみたい気もします。しかし、このふざけたギャグ調も先生の持ち味であり、失わないでいてほしいとも。とにかく今はお疲れさまでした。最高の作品、ありがとうございました。

 

 

 

 

チラシ裏のコーナー
あとがきで書かれているコトヤマ先生のもつ女性像、「異性」の本質の話には膝を打った。これがヒロインズの造形や表現につながっているのだと。漫画的なわかりやすさはあっても、それ一辺倒でなくヒロインズのちょっとわからない感じがいい味になっていました。

 





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