ミドルエイジの再興を描く『らーめん再遊記』4巻が発売されました。第27杯から第35杯まで収録。表紙は豪華な端麗醤油系。チャーシューが2種類とワンタンがあるのが今風っぽい。
4巻はラーメン自動販売機の解決編と、せあぶらラーメンの導入編です。ラーメン自動販売機を使った宇崎との対決は、かなり泣けました。ラーメンへの情熱を一度は失った芹沢が、社長と言う立場を捨て、一職人として好き勝手に行動するというのがこの再遊記のポイントです。らあめん清流房が流行りだしてからは、大きな挫折を味わっていない芹沢に対して、宇崎は創麺宇崎を流行らせるも、自分の理想を追い求めるあまり事業として失敗し、店をつぶしてしまっています。しかし彼もラーメンを作る中で、また情熱を思い出し、芹沢や周りに説得され戻ってきます。「俺のラーメンの中に俺はいない」とまで言った男が再起する姿はかっこよく、しかもたしかに「中に俺はいない」ラーメンで再起してるのは素晴らしい。今は製造されてない修理部品もないラーメン自動販売機に、バリバリ最前線を張る時代を過ぎた男を重ねる演出も泣けます。久部緑郎先生の、ラーメンの引き出しはどんだけあるんだ。知識、引き出しだけじゃなくストーリーに絡める能力は素晴らしいですね。自分は世代じゃないのでわかりませんが、ちょくちょく出てくる80年代プロレス・音楽などの話題は、世代の人には刺さるのもわかります。ラーメン勝負していながら、勝ち負けの結果があまり重要視されずに馴染んでいるのも、少年誌の料理勝負漫画のそれとは違って、大人のグルメ漫画の風格を保っています。モブに「ラーメンハゲ」というワードを言わせたり、ラーメンyoutuberが登場したり、ラーメンの流行廃りも現在の感覚が残っていて、読んでいて違和感を感じないのも、すごいですね。
何より、発見伝から続く芹沢さんのキャラの強さが素晴らしいです。いじわるな顔をする前に、一コマニュートラルな表情で「・・・」台詞のコマを挟むことが多く、ちょっと考えたあげく、そういう顔&言動させてるんだなぁというのが彼の性格に厚みを持たせています。かといって、大事なシーンでは表情を描かないで読者に想像させたり、作画のテクニックもいい。「さてさて、どうしますか宇崎さん」の前の1コマ、これが味わい深いんだよなぁ。
新しい背油ラーメン編では、芹沢さんの過去のエピソードも明かされました。若い頃の芹沢さんは尖ってるなぁ。島耕作みたいにヤング芹沢さんやっても面白いんだろうなぁ。ここまでガチで因縁のある相手とは今後どうなるのか気になります。ブームが過ぎ去った背油ラーメン店は、どう復活させられるのか、今後も芹沢さんの活躍が楽しみです。
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